アレルギー疾患その1:花粉症
花粉症は毎年春頃になると多くの人が発症します。
花粉が多く飛び交う時期に花粉症になりやすいのは多くの人が知っていることですが、花粉症もアレルギー疾患のひとつで、植物の花粉が鼻や目などの粘膜に接触することによって引き起こされます。
花粉症を発症すると、花粉を吸い込むたびにくしゃみや鼻水、眼の痒みといった辛い症状が続くのです。
スギなどの植物が多い地域では、マスクなどの花粉症グッズだけで対策をすることで症状を抑えることも可能ですが、治療薬でより効率よく症状を軽減する方法もあります。
花粉症の症状
花粉症は「季節性アレルギー性鼻炎」とも呼ばれているアレルギー性鼻炎の一種です。
花粉症を発症すると、くしゃみや鼻水、目のかゆみといったアレルギー性鼻炎の症状が現れます。
それ以外にも、喉や耳、胃腸などにも何かしらの症状が出ることがあるのです。

くしゃみ・鼻水・鼻づまり
くしゃみや鼻水、鼻づまりといった鼻に出る症状は、花粉症では最も多く見られます。
花粉は空気と一緒に鼻から侵入します。
すると鼻の細胞内にある肥満細胞に、花粉が取りついてヒスタミンやロイコトエン、トロンポキサンなどの物質が放出されます。
これらの物質が神経や血管に刺激を与えることで、くしゃみや鼻水、鼻づまりが引き起こされるのです。
くしゃみは鼻の粘膜についた花粉(異物)を取り除くための生理現象です。
花粉症で起こるくしゃみは連続して起こり、回数も多いのが特徴的です。
鼻水も異物である花粉を鼻の中から出そうとする粘膜ですが、花粉症では風邪で起こる鼻水とは違って粘り気の少ないサラサラした鼻水が出る傾向にあります。
鼻の穴から入った空気は鼻腔内を通って喉に行きますが、花粉症によって鼻腔内の粘膜が腫れると鼻の通りが悪くなって鼻水が詰まってしまうのです。
目の症状
花粉症を発症すると、鼻だけでなく目にも異常が出ます。
花粉は空気を通して目につくことがあるのですが、そうすると目についた花粉を落とそうと免疫反応が起こります。
その結果、眼の痒みや充血、涙が引き起こされるのです。
目のかゆみは鼻の症状と同じように花粉症ではよく見られる症状です。
炎症が起きていることでかゆみが生じているのですが、こするなどの刺激を与えると症状が悪化したり、角膜や結膜を傷つけたりする恐れがあるので注意しましょう。
花粉の付着によって結膜に炎症が生じ、充血になることもあります。
これは白目の血管が拡張しているからです。
花粉によって涙が止まらないといったこともあるのですが、これは目に付着した花粉を落とそうとしているのです。
のどの症状
花粉はのどにも付着することがあり、のどに花粉が付着すると、のどがアレルギー反応を起こし、咳が出てしまいます。
呼吸は鼻から吸うのが多いので鼻の症状に悩む人が多いのですが、鼻がつまっていたりして口呼吸になると、喉にも花粉の影響が及んでしまうのです。
風邪の時に出る咳とは異なり、花粉症の咳は痰のない、もしくは少ない乾いたような咳です。
なお、花粉症の一般的な症状は鼻に出ることが多いので、花粉症による咳はあまり知られていませんが、花粉で喉がアレルギー反応を起こすことで喘息にかかるケースもあるようです。
眠気・睡眠不足
花粉によってアレルギー性鼻炎になると、鼻の粘膜が炎症を起こすことで空気の通り道が狭くなり、取り込める酸素の量が減ってしまいます。
そうなると脳が酸素不足を起こして眠気につながってしまうのです。
さらに、鼻がつまって呼吸がしづらくなることが睡眠の妨げになり、睡眠不足に陥ることもあるのです。
花粉症を改善・予防する方法
花粉症対策では、今出ている症状を抑えることはもちろん、今後再発しないように予防に努めることも大切です。
花粉症の治療薬
花粉症の治療に用いられる薬には、飲み薬(内服薬)、点鼻薬、目薬(点眼薬)があります。
点鼻薬と目薬はそれぞれ鼻と目に症状が見られる時に使用されますが、飲み薬はもっともよく使われている薬の種類です。
飲み薬といっても、大きく分けて4種類に分類できます:
・抗ヒスタミン薬
・抗ロイトコリエン薬
・抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬
・経口ステロイド薬

抗ヒスタミン薬はくしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状を全般的に治療できるお薬です。
抗ロイトコリエン薬や抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬は鼻づまりが酷い時に用いられます。
経口ステロイドは、他の薬で症状がよくならない時に使用されるものです。
詳しくは、【抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬とは】をご覧ください。
花粉症対策グッズ
花粉症は、花粉が体内に入ることが原因です。
花粉症対策では、花粉のばく露を防ぐことが大切です。
花粉症対策グッズにはマスクや花粉予防スプレーなどさまざまな製品があります。
最近では花粉に特化したグッズが数多く発売されています。
マスク
マスクは花粉症対策グッズの中では最もメジャーなものでしょう。
環境庁が発行した「花粉症環境保健マニュアル」によると、マスクの装着は吸いこむ花粉を3分の1から6分の1に減らす効果があるようです。
マスクには色々な種類がありますが、最近では花粉症に特化したマスクも販売されています。
性能の良いマスクでは、95%以上もの花粉をカットしてくれるのです。
なお、マスクにはガーゼマスクと不織布マスクがあります。
ガーゼマスクは、フィルターがなく1枚のガーゼを折りたたんで縫製しているマスクです。
不織布マスクは不織布の中にフィルターが入っているタイプです。
ガーゼマスクは目が粗いのに対し、不織布マスクはより細かい粒子などをカットできるため、花粉を予防するなら不織布マスクが良いでしょう。
メガネ
メガネは一般的なものであっても目に入る花粉を約40%カットすることが可能です。
花粉予防に特化したメガネだと約65%もカットできます。
一般的なメガネだと隙間から花粉が侵入してしまうのですが、ゴーグル型のメガネなら花粉の侵入をより防ぐことができるのです。
中にはメガネを装着せずにコンタクトレンズで視力を補っているという方もいます。
花粉の飛散時期にコンタクトレンズを装着していると、花粉がレンズに付着して症状が悪化してしまう恐れがあります。
花粉時期には、できるだけメガネに替えることをお勧めします。
花粉ガードスプレー
花粉ガードスプレーは髪や肌、衣服にスプレーすると、花粉が身体に付着するのを防いでくれます。
スプレーには「ペクチン」という成分が含まれており、これが花粉をキャッチします。
マスクが息苦しく感じてしまう、おしゃれの為にマスクを装着したくないという時にオススメです。
服装で対策する

マスクやメガネのほかにも、髪を束ねて花粉が髪のあちこちに付着しないようにしたり、花粉が付着しにくいような衣服を身につけるという方法があります。
特に衣服は身体の大部分を占めますので、トレンチコート、ジャンパー、トレーナー、チノパンなど、凸凹の少ない素材が良いでしょう。
また、静電気の発生によっても花粉が付着しやすくなるので、ウールやフリースなどは避けましょう。
花粉を室内に持ち込まない方法
花粉が飛び散っている野外ではマスクやメガネなどで体内に花粉が侵入することを防ぐことが大切ですが、外から帰ってくると衣服などに花粉が付着しているので、そのままにしていると家の中で花粉症の症状が出るかもしれません。
花王が行った調査「花粉に関する生活者実態とその対策の検証」によると、外気中の花粉の量の0.1~8.0%、1日あたり約2,000万個の花粉が室内に持ち込まれるそうです。
花粉の室内への侵入経路として、他にも部屋の換気時に窓を開けることで外から花粉が侵入することが考えられます。
また、ベランダなど屋外に干した洗濯ものに花粉が付着して、衣服を取り込んだ時に花粉も一緒に侵入してしまうこともあるでしょう。
対策として、花粉飛散時期は日常生活の中で下記のことを行うようにしましょう:
・家に入る前に衣類をはたく
・換気は深夜や早朝に行う
・こまめに床を掃除する
・加湿器を設置する
・洗濯物は室内に干すか、外で干した後ははたいてから取り込む
・エアコンに花粉吸着フィルターを取り付ける
なお、帰宅したら必ず手洗いとうがい、顔洗いを行いましょう。
そうすることで、鼻やのどの奥に付着した花粉を落とすことができます。
花粉症で症状を抑えるには、マスクやメガネなどのグッズを使用したり、服装に気を使ったりと注意点が多くあって大変ですが、症状が出てしまうと生活に支障が出る恐れもあります。
しっかり対策して、それでも症状が治まらない場合は薬の服用を検討しましょう。