痛風治療薬とは

痛風治療薬

痛風治療薬とは、痛風や高尿酸血症の治療で用いられるお薬を指します。
痛風は体内の尿酸が増えることで関節の中で尿酸が結晶化し、激しい関節炎を伴う病気です。

痛風治療薬は発作の痛みを和らげたり、体内の尿酸値を下げるといった作用で、痛風の症状を改善したり、痛風を治療するのに役立ちます。

痛風と痛風治療薬の歴史

痛風ははるか昔からあったと知られている病気のひとつです。
それは紀元前にものぼり、医学の父と呼ばれているヒポクラテスが痛風を患っていたという話があります。

他にも、アレクサンダー大王やレオナルド・ダ・ヴィンチ、ゲーテ、ニュートン、ダーウィンといった西洋の歴史で有名な人々が痛風持ちだったと言われています。
エジプトで発掘されたミイラの関節に尿酸塩が見つかったという報告からも、痛風がはるか昔から人々を悩ませていた病気であることが伺えます。

ヒポクラテスは痛風のことを、関節のあたりに生じる病気の中で、もっとも強烈でもっとも長期にわたりもっとも癒しにくいと述べています。

痛風が現代でも一度発症すると治りにくいとされており、また激しい関節炎も起こることから、ヒポクラテスの痛風の例え方はほぼ間違いないと言えます。

痛風治療薬については、紀元前15世紀頃と思われる資料に、コルチヒンを含む痛風薬についての記述が発見されています。
紀元前5世紀にヒポクラテスが臨床的観察を行い、同じ頃に東ローマ帝国のビザンチン医師団が痛風の治療にコルヒチンを使用していたようです。

痛風の研究はその後様々な国で行われ、1797年のイギリスで痛風結節の内容が尿酸塩と証明され、1898年にはドイツで尿酸はプリン体が変化したものであることが明らかにされたのです。

19世紀で痛風が起こる原因が解明され、その原因をもとに痛風を緩和・治療する薬が現代まで次々と開発されてきました。

ちなみに昔の日本では痛風にかかる人はほとんどいなかったそうで、現代になり食生活が変化してきたことで、他のアジア諸国と同じように日本でも痛風患者が増えています。

痛風治療薬の種

・痛風発作を抑える薬
・発作の炎症や痛みを抑える薬
・尿酸値を低下させる薬

細かい種類やそれぞれの効果効能は、後ほど解説していきます。

基本的に、痛風治療薬は尿酸値が目標値を下回っても自己判断で服用をストップしてはいけません。 勝手に服用を止めてしまうと、尿酸値が不安定になったり、理想値になった尿酸値がいつの間にか戻って再度発作が起きる危険性があるのです。

痛風は一度発症すると完治するのが難しいと言われており、放置しておくと悪化して腎臓障害や糖尿病など恐ろしい病気を引き起こすこともあるのです。

痛風でお悩みの方は、痛風治療薬の種類や作用・効果などを把握した上で、正しく服用して治療に励みましょう。

痛風治療薬とは

痛風治療薬は大きく分けて3種類あります。

・痛風発作を抑える薬
・発作の炎症や痛みを抑える薬
・尿酸値を低下させる薬

それぞれ作用や効果が異なり、痛風治療薬ならどれでも良いというわけではありません。
ご自分が抱えている症状や適切とされる治療法を考慮したうえで、どの薬を服用するのか決めることが大切です。

主な痛風治療薬

痛風治療薬の種類 成分名 商品名
痛風発作抑制薬 コルヒチン コルヒチン錠
痛風発作治療薬 ナプロキセン ナイキサン
プラノプロフェン ニフラン
オキサプロジン アルボ錠
尿酸排泄促進薬・ 鎮痛消炎薬 ブコローム パラミヂン
尿酸排泄促進薬 プロベネシド ベネシット錠
ベンズブロマロン ユリノーム錠
尿酸生成抑制薬 アロプリノール ザイロリック錠
アロシトール錠
サロベール錠
アロプリノール フェブリク錠
トピロキソスタット トピロリック錠
ウリアデック錠
尿酸生成抑制薬 クエン酸カリウム、 クエン酸ナトリウム水和物 ウラリット-U配合散
ウラリット配合錠

痛風発作を抑える薬

痛風発作を予防するお薬として代表されるのが「コルヒチン」です。

痛風は尿酸値が高いことにより、関節に結晶化した尿酸が蓄積し、それが剥がれることで引き起こされる病気です。

衝撃を受けたり尿酸値が急激に低下するなど、何かしらの原因で蓄積した尿酸結晶が剥がれ落ちることがあります。

その際に白血球が剥離した尿酸結晶を異物とみなし攻撃するのですが、これが痛風発作の痛みや腫れの引き金となるのです。

痛風発作が起こっている間、患部にはたくさんの好中球(白血球の一種)が集まっており、好中球が炎症物質を放出することで痛みが発生するのです。

コルヒチンは白血球(好中球)が関節内に集まるのを抑える作用(遊走の抑制)を持っています。
また、コルヒチンは白血球が尿酸結晶を食べる作用を抑制する働きも担っているのです。

コルヒチンの働き

コルヒチンの特徴

コルヒチンは痛風の初期段階で服用するのが良いとされています。
発作を予防する効果があるため、発作が起こる前や発作が起こった直後に飲むと高い効果が期待できるでしょう。

コルヒチンはあくまで痛風発作予防薬であり、消炎・沈静効果は持っていません
発作中の激しい痛みを抑えるためにコルヒチンを服用しても症状は軽減されないでしょう。

また、コルヒチンには尿酸が体外に排泄されやすくなる作用もないため、痛風の根本的な改善にはならないのです。
痛風発作を予防するための薬ですので、長期間服用することは推奨されていません

発作の炎症や痛みを抑える薬

痛風発作は関節炎による激しい痛みを伴います。
炎症や痛みの鎮静には、通常「非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)」と呼ばれる薬を用います。

痛風発作に用いられる鎮痛・抗炎症剤に代表されるのが「ナプロキセン」です。
炎症を鎮めて腫れや痛みを抑えます。

ナプロキセンはあくまで対症療法薬ですので、痛風発作の原因そのものを解消する薬ではありません

ナプロキセンの特徴

ナプロキセンは鎮痛薬の中でも比較的効き目が早いのが特徴です。
痛風発作のような激しい痛みを伴う症状の場合、少しでも早く痛みを和らげるためにナプロキセンは非常に役立ちます。

なお、非ステロイド抗炎症薬で痛みが治まらない場合は、ステロイド剤が用いられます。

尿酸値を低下させる薬

尿酸値が高くなる原因は、尿酸の生成量が多すぎることと尿酸の排泄量が少なすぎる場合の2つがあります。

尿酸値を低下させるには、痛風の原因がどちらに当てはまるのかを見分け、それを解消する薬を服用する必要があるのです。

よって、尿酸降下薬は2種類に分けられます。

・尿酸生成抑制薬…プリン体が尿酸に変化する時に必要な酵素の働きを阻害することにより、尿酸の生成を抑える

・尿酸排泄促進薬…尿細管での尿酸の再吸収を抑え、尿酸の尿への排泄を促進する

尿酸降下薬は、発作が引いてから服用を開始します。
尿酸値が急激に下がると尿酸結晶が不安定になって剥がれ落ちて発作を招く恐れがありますので、尿酸降下薬は少量から服用開始することが多いのです。

尿酸降下薬で代表的なのが「ザイロリック錠」です。
ザイロリック錠は尿酸生成抑制薬にあたり、尿酸の生成量を抑えることで尿酸値を下げる効果を持っています。

ザイロリック錠の特徴

ザイロリック錠は尿酸産生過剰型の痛風患者に対して用いられます。
尿酸は体内でプリン体が変化してできるものですが、アロプリノールはその過程で必要な酵素の働きを阻害することで尿酸の生成を抑えます。

アロプリノールの働き

なお、ザイロリック錠などの尿酸降下薬には尿酸値を下げる効果があるのですが、痛風発作が起こっている最中に服用してしまうと、結晶化した尿酸が剥がれ落ちて痛みが悪化する恐れがあります

尿酸降下薬を服用中に発作が起こってしまった場合には、服用を注意して発作が止んでからしばらく様子を見た上で服用を再開しましょう。

なお、痛風の薬物治療では、段階や尿酸値が高い原因に合わせて下記のように服用する薬を決めます。

処方例)
・痛風関節炎予兆時:コルヒチン錠
・痛風発作時:非ステロイド抗炎症薬
・産生過剰型高尿酸血症:ザイロリック錠
・排泄低下型高尿酸血症:ユリノーム錠やウラリット錠

痛風治療薬の服用方法

上述のとおり、痛風治療薬には複数の種類が存在し、痛風の進行具合やその時の症状によって使い分けます。

こちらでは、それぞれの痛風治療薬の飲むタイミングや服用方法をご紹介します。

痛風治療の3ステップ

それぞれの薬の服用方法をご紹介する前に、痛風を治療するための適切なステップをご紹介します。

ステップ1:痛風発作の予防

痛風発作の兆候として、足の親指の関節がむずむずする、痛みがある、赤く腫れているといったものがあります。

これらの兆候に気付いた時点で、薬を通して痛風発作の予防を行うことにより、重篤化するのを回避できるでしょう。

ステップ2:痛風発作(痛風関節炎)を鎮める

痛風を発症すると、痛風発作と呼ばれる激しい関節炎が起こります。
痛風発作はある日突然起こり、その痛みは我慢できないほどです。

ここで治療をせずに放置しておくと、痛風発作の頻度が高まっていき、関節だけでなく臓器にも尿酸結晶が溜まり、慢性腎臓病や尿路結石といった合併症を招く可能性が高まります。

発作が起きた段階で発作を鎮めるための治療に専念しましょう。

ステップ3:高尿酸血症を是正する

痛風の原因は血中の尿酸値が高いことです。
痛風の薬には発作を即時に止めるものや痛みを緩和するものもありますが、根本的な原因を解消しなければ痛風は治りません。

発作が治まった段階では、尿酸値を下げる薬を服用し尿酸を体外に出やすくすることが大切です。

痛風治療薬の服用方法

痛風治療薬は痛風発作抑制薬や痛風発作治療薬、尿酸排泄促進薬など複数の種類に分けられ、それぞれ服用時期や服用方法が決められています。

痛風発作抑制薬(コルヒチン)

コルヒチンは痛風発作を予防および緩解するお薬で、通常痛風の初期段階で服用します。

●痛風予防時の服用方法

血中の尿酸値を下げる治療では、発作が起きないようにする目的でコルヒチンを1日1錠服用します。

●痛風発作予感時の服用方法

足の親指に違和感があるなど、痛風発作が起きそうだと感じたら(痛風発作予兆)、発作時の痛みを軽減する目的でコルヒチンを1錠服用します。

●痛風発作時の服用方法

痛風発作では激しい関節の痛みが引き起こされます。 痛みが軽減するまで1回1錠を3~4時間ごとに服用し、これを1日6~8回繰り返します。 ただし、1日に服用する錠剤の数は3錠までが理想だとされています。

コルヒチンは痛風発作が起きてすぐに飲むと効果が高いのですが、時間が経過すると高い効果は期待できません。

なお、日本では痛風発作時に飲む薬としてコルヒチンが処方されるケースは少ないようです。

非ステロイド抗炎症薬(ナプロキセンなど)

非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)は、痛風によって起こる炎症や痛みを鎮静するために一般的に処方される薬です。

痛風発作にNSAIDsを使用する場合、短期間で通常よりも多い量の薬を服用します(NSAIDパルス療法)。

ナプロキセンを例にとると、300mgを3時間おきに3回服用し、それでも痛みが鎮静されなければ24時間後に再度300mgを3時間おきに3回服用します

この方法で痛みが治まってきた場合は、薬の量を通常量に減らし、症状がなくなるまで服用し続けます。

非ステロイド抗炎症薬で痛風発作が治まらないと判断された場合は、ステロイド剤での治療に切り替えることが多いようです。

尿酸排泄促進剤(ベンズブロマロンなど)

尿酸排泄促進剤は、腎臓に作用して尿酸の排泄量を増やすことにより尿酸値の下降を促す薬です。

尿酸排泄促進剤は、痛風発作が治まってから服用を開始します。
始めは少量を使って尿酸値を継続的に測定しながら徐々に増やしていきます。
尿酸値が目標とする値に達するまでに約半年かかるとみておきましょう。

尿酸排泄促進剤の服用中は、尿酸をできるだけ多く体外に排出させるために、1日の尿量が1.5~2.0Lになるように水分を摂りましょう

尿酸生成抑制剤(アロプリノールなど)

ザイロリック錠などアロプリノールを有効成分とする薬は、肝臓で尿酸を生み出す酵素の働きを抑えることにより、血中尿酸値を下げる効果を持っています。

尿酸生成抑制剤は、痛風発作が治まるまで服用を開始せず、鎮静化してから使用してください
尿酸生成抑制剤の服用中は、尿量が1日2L以上になるように水分補給を図りましょう。

尿酸排泄促進剤も尿酸生成抑制剤も、発作中に服用してしまうと関節に溜まった尿酸結晶が剥がれ落ちて発作の痛みが悪化する恐れがあります。

痛風治療薬の服用で注意すること

薬を自己判断で減薬・断薬しない

痛風治療薬で尿酸値が理想値まで下がったからといって、自己判断で薬を減らしたり服用を止めたりすると、尿酸値が再度上昇して痛風発作が再発することがあります。

尿酸値が目標値まで下がっても、しばらく服用を続けてください。

用法・用量を守る

痛風治療薬は、決められた量を超える薬を服用したからといって早く治るわけではありません。

尿酸効果薬に限っては、飲みすぎると尿酸値が急激に下がって痛風発作を引き起こす恐れがあります。

痛風は長期にわたって治療するべき病気であることを念頭においておきましょう。

定期的に検査を受ける

服用期間中は、尿酸値や薬の副作用を調べるために、定期的に医療機関を受診して血液検査などを受けるようにしましょう。

痛風治療薬を服用中、まれに肝機能障害などの副作用が起こることがあります。
知らずしらずのうちに副作用を重篤化させないためにも、検査が必要です。

痛風治療薬の副作用

痛風の治療では、症状や病気の段階などに応じて決められた薬を服用します。

痛風治療薬には痛風発作治療薬をはじめ、痛風発作抑制薬や尿酸降下薬などさまざまな種類がありますが、いずれも副作用が起こるリスクがあります。

痛風治療薬で起こり得る副作用を理解することで、副作用が起こってしまった際にうまく対処することができるでしょう。

痛風発作抑制薬(コルヒチン)の副作用

コルヒチンは痛風発作を予防したり緩解する薬で、通常痛風の初期段階で服用します。
痛風発作に対して即効性が高い薬なのですが、副作用のリスクも他の薬と比較して高い傾向にあるのです。

コルヒチンの副作用には下記のようなものがあります:

下痢・吐き気などの胃腸障害・脱毛・じんましん・息切れなど

コルヒチンの副作用発生率は4.6%で副作用が起こるのは稀ですが、多量に飲むと白血球減少や末梢神経障害といった重篤な副作用を引き起こす可能性があり、大変危険です。

基本的に医師の指示のもとで短い期間で少量を服用する薬なので、多量に飲んだり長期間飲んだりすることは止めましょう。

痛風発作治療薬の副作用

ナプロキセンやインドメタシンといった非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、炎症や痛みを鎮静させる効果があり、痛風発作に対してもっとも一般的に使用される薬です。

非ステロイド性抗炎症薬で一般的に多いのが、胃潰瘍といった胃腸に関する副作用です。
軽度の腎機能障害も痛風治療を行っている患者によく見られ、腎機能障害がある方や高齢の方は十分に注意する必要があります。

他にも、NSAIDsの副作用には下記のようなものがあります:

肝不全・神経性鼻炎・喘息・じんましん・頭痛・めまい・抑うつなど

ナプロキセンといったNSAIDsを長期的に服用するとなった場合は、定期的に腎機能や肝臓、胃の検査を受けることをおすすめします。

尿酸降下薬の副作用

尿酸降下薬には大きく分けて「尿酸排泄促進薬」と「尿酸生成抑制薬」の2種類があります。

尿酸は腎臓でろ過された後に尿中に排泄されますが、その多くが尿細管で血液中に再吸収されて体内に戻ってしまいます。

ユリノームやベネシッドといった尿酸排泄促進薬は、尿酸が尿細管に吸収されるのを防ぐ働きがあるのです。

尿酸排泄促進薬では、下記のような副作用が稀に起こります:

胃の不快感・吐き気・発疹・肝機能障害・食欲不振・尿路結石など

肝機能障害といった重篤な副作用がごく稀に報告されており、肝臓に問題がある方は注意が必要です。

尿路に結晶の石が詰まって起こる尿路結石も、尿酸排泄促進薬の利用で注意すべきものです。
尿路結石の発症の可能性が高い方は、尿酸の生成を抑える尿酸生成抑制薬を使用します。

尿酸生成抑制薬の副作用

ザイロリック錠などの尿酸生成抑制薬は、体内でプリン体が尿酸に変換する際に使われる酵素の働きを阻害して尿酸の生成を抑える薬です。

尿酸生成抑制薬の副作用には下記のようなものがあります:

皮膚粘膜銀症候群・黄疸・腎不全・肝機能障害など

副作用を予防する・悪化させないために

痛風治療薬を服用していると、上記のような副作用に見舞われる可能性は十分にあります。

特に腎臓や肝臓に問題があると副作用のリスクが高まるため、持病がある方は事前に医師に相談することを強くおすすめします。

また、万が一副作用が起こって症状が解消しない、悪化していくようであれば、すぐ病院を受診しましょう。

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