あがり症(社会不安障害)について

あがり症とは、正式な病名ではなく一般的に使われてきた名称です。

社会不安障害の症状のひとつで、対人恐怖症や赤面症などと同義。
「緊張しい」「恥ずかしがりや」などと性格上の問題と捉えられがちですが、あがり症は自律神経の不調から起こる病気です。

発症した人のうち75%が15歳以下と、比較的若い年代での発病が特徴的。
反対に20代以上での発症は15%に留まり、とくに35歳以上の患者数は20~34歳の半数以下まで減少します。

あがり症(社会不安障害)の症状

「人前で話すのが苦手」「他人に見られていると思うとドキドキする」など、緊張しやすいタイプだという人はいます。
そういう傾向があるというだけであれば性格として認識できますが、緊張や不安の度合いが強すぎるあまりに苦痛をともなうという場合は社会不安障害という病気かもしれません。

・汗が止まらなくなる
・呼吸が荒くなる
・手がふるえる
・声がうわずってしまい、うまく話せない
・頭のなかが真っ白になる
・身体がほてったりのぼせたりする
・口のなかが渇く

これらの身体症状は、交感神経の異常な活性化によって引き起こされます。

あがり症はメンタルが弱いという性格ではなく、身体の症状をともなう疾患であることを正しく認識しなくてはいけません。

過度な緊張が悪循環を生む

あがり症の人は、人前に出ることや他人からの注目を集めることに強い緊張や恐怖を感じます。

異常な発汗やふるえ、顔のほてりといった体調の変化が、人前での答弁や電話対応、飲食などの行動を失敗させてしまう原因に。
「失敗してしまった」という体験が、再び同じ状況が訪れたときに「また失敗してしまったらどうしよう…」という不安や緊張を招いてしまいます。

過度な緊張が発汗やふるえなど人目をひきやすい身体症状につながり、結果として同じ失敗を繰り返しやすくなるという悪循環を生んでしまいます。

あがり症(社会不安障害)の原因

あがり症(社会不安障害)になってしまう原因は、先天的なもの【遺伝】と後天的なもの【環境】の2つ。
とくに、環境的な要因が大きく影響すると考えられています。

発病の原因とは別に、あがっているという身体症状を生じる原因についても正確な理解が必要です。

育てられ方が大きく影響する

あがり症になってしまう原因のひとつが、先天的な性質。

・自分が苦手意識を持っている対象を回避したがる
・不安になりやすい

といった個人的性質が特徴的です。

しかしあがり症の発症に大きく影響するのは、後天的に与えられる生育環境です。

 【養育環境】
外部からの評価を気にしすぎる育て方
過度な保護や甘やかし
恥をかかせて罰を与える

 【失敗体験】
自分が人前で恥をかいた体験が恐怖になり、他人の失敗を見ても自分のように感じてつらくなってしまう

 【社会的役割の変化】
成長するにしたがって他者からの注目を集める機会が増えたり、潜在的な自己評価の低さと現実におかれている立場との乖離を感じるようになったりする

自己に否定的である・何事も回避しがちであるといった行動が習慣的な育てられ方が、あがり症の大きな要因になると考えられています。

交感神経の活性化

あがり症による体調の変化は、神経伝達物質のひとつ・ノルアドレナリンが増加して引き起こされます。
ノルアドレナリンは緊張や不安を感じると分泌が促進され、交感神経を活性化。
交感神経は日中の活動を司る自律神経で、心拍数や体温、血圧の上昇といった身体症状を招きます。

心拍数の上昇=動悸
体温の上昇=ほてり
血圧の上昇=めまい、のぼせ

このように交感神経が優位な状態は、「あがり」と言われる症状に直結しています。
誰でも緊張すれば交感神経が活発になり、普段よりも心臓がドキドキしたり汗をかいたりしやすくなるもの。
しかしあがり症の人は、交感神経が敏感なために身体反応も強く現れてしまうのです。

あがり症(社会不安障害)の対策・治療方法

あがり症(社会不安障害)の治療は、心と身体の両方をケアしながら治療を進めます。

✔ 不安や緊張を和らげる=抗不安薬・抗うつ剤の服用
✔ ほてりや発汗などの身体症状を和らげる=β遮断薬の服用

不安な気持ちを和らげる

精神面へのアプローチにはおもに抗うつ剤と抗不安薬、2種類の薬が用いられます。

【抗うつ剤】

SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という分類の薬剤で、セロトニン濃度を一定に保つことでうつ状態を緩和。
長期的に継続服用することで、脳の緊張や不安を和らげて穏やかな状態をキープします。

パキシルジェイゾロフトレクサプロなど

【抗不安薬】

脳内伝達物質・GABAに作用し、抗不安・催眠作・筋弛緩作用を発揮。
即効性があり、不安やストレスを抑える頓服として用いられます。

▶デパス、レキソタン、リーゼ、ワイパックスなど

身体症状をおさえる

抗不安薬で気持ちを落ち着かせでも身体症状が抑えられない場合には、β遮断薬を投与します。

β遮断薬は、交感神経の受容体をさえぎる役割をもっています。
緊張を感じた際には血中のノルアドレナリン値が上昇し交感神経を刺激しますが、β遮断薬はノルアドレナリンと交感神経をつなぐ受容体を遮断。
緊張が身体反応へとつながるルートがなくなるので、ふるえたり過剰に汗をかいたりという症状が抑えられます。

▶インデラル、アロチノロールなど

ほかにも、発汗抑制に特化した抗コリン薬(プロバンサイン)や吐き気を抑える制吐剤(ナウゼリン)などを服用する場合もあります。

認知行動療法

あがり症の治療では、投薬だけでなく心理療法も実施。
失敗に対する恐怖や不安を受け入れ、上手につきあいながら克服することを目的とします。

時間をかけたカウンセリングを通して、「失敗してはいけない」「きっと自分は他人から評価されないんだ」という偏った思考をほどよい範囲に修正していくのが認知行動療法。

バランスの悪い考え方やものの捉え方が自分のなかに定着してしまっていると認識したうえで、「少しくらいの失敗や他者からの悪い評価では、自分という人間の価値は下がらない」と自己を肯定していく訓練を続けます。

あがり症は恐怖心や不安が根底にある病気なので、行動や考え方のパターンに重点をおいた治療も有効。
投薬と並行して認知行動療法を続けることで、少しずつ改善を目指していきます。

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