統合失調症

統合失調症は、妄想や幻覚、現実に対する感覚の低下などを生じる精神障害です。

100人にひとり罹患するという発症率の高さと、日常生活に支障をきたし人生に大きな損失を与える疾患として問題視されています。

ある時期に前触れなく発症することもあれば、数日~数週間のあいだに少しずつ症状が現れる場合も。また数年かけて徐々に異変を生じるケースもありますが、早い段階で発症に気づいて治療を始められれば回復の度合いもよくなります。

統合失調症の症状

統合失調症の症状は段階的に進行していきます。

発症のサインが現れる前兆期にはじまり、幻覚や幻聴、妄想といった症状が顕著になる急性期、感情の波や意欲がなくなる休息期、目立った症状が治まる回復期(認知機能障害を生じる場合もあり)、以上4つの段階を経て回復、または繰り返していきます。

早期に投薬治療を始めて継続できれば再発が予防できますが、休息期や回復期に症状を誘発するきっかけを生じると急性期に引き戻されてしまいます(再発)。
再発を繰り返すごとに休息期や回復期に至るまでの期間が長くなり、社会復帰が遅れていきます。

統合失調症によって生じる病態も4種類に分けられ、具体的な症状によって治療方法は異なります。
ひとつの症状のみ現れる場合もあれば、同時に複数の症状がみられる場合もあります。

陽性症状

陽性症状は、精神的な働きが過剰に高まってゆがみが起こっている状態です。

妄想

誤った知覚や体験にもとづく思い込みが続きます。
「自分の仕事が妨害されている」「家族やパートナーに裏切られている」など、現実的に起こりうる思い込みのほか、「実はこっそり心臓が抜き取られている」といった非現実的な思い込みが起こることもあります。

幻覚(幻聴)

実際には存在しないものがそこにあるように感じるのが幻覚です。
ないものが見える、いない人の声が聞こえる、存在しない匂いや味を感じるなど、さまざまな症状として現れますが、なかでも多いのは幻聴。

・自分に対する批判や悪口が聞こえる
・すでに亡くなっている人が話しかけてくる

など一方的な場合もあれば、架空の声と会話する場合もあります。

陰性症状

陰性症状は、精神的な働きが極度に低下している状態です。

・人と目を合わさなくなる
・手や表情を使って感情を強調することがなくなる
・口数が減って会話が広がらない

感情表現や発語の減少が目立ち、意欲や目的意識、目標、喜びといった感情の喪失も伴います。

解体症状

解体症状は、思考の障害や異常行動を指します。

自分の考えがまとまらなくなり、会話があちこちに展開していきます。周囲の人が「おかしいな?」と感じる程度から、「話の筋がまったく理解できない」といった支離滅裂な状態まで悪化する場合もあります。
他者の発現によって思考が中断されると、それ以上言葉が出なくなるケースも。

また過度な興奮や子供っぽい振る舞い、わざとらしい挨拶や身振り、かたくなに一定の姿勢をとり続けるといった異常行動が目立ちます。

認知障害

認知障害では、集中力や記憶力などが著しく低下しています。

・本や映画のストーリーを理解できない
・言葉の裏に隠された真意や比喩が理解できない
・手順に沿って料理ができない

必要な情報だけを選択してそれに集中できない、記憶と現状の比較にもとづいた判断ができない、系統立てた考え方ができないといった状態です。

統合失調症の原因

なぜ統合失調症を発症するのか、明確な原因は究明されていません。

現在のところ、先天的な要因(遺伝)後天的な要因(環境)など複数の要素が絡み合って発症すると考えられています。

遺伝的な要因

発症率の統計から、遺伝が発症に大きく関わっていることは明らかです。

発症率
家族や親せきに統合失調症患者がいない場合 約1%
親または兄弟姉妹に統合失調症患者がいる 約10%
一卵性双生児のひとりが統合失調症患者 約50%

環境的な要因

劣悪な養育環境やメンタルの平穏を保てない環境も、発症に起因すると考えられています。

アメリカの精神医学研究者・グレゴリー=ベイトソンは、ダブルバインド(2つ以上の矛盾した選択肢に対して指摘できず、さらに返答を強いられることで精神状態が拘束されてしまう状態)を多用する親に育てられると、統合失調症を生じやすいという説を発表。

しかし養育環境はいくつかある発症要因のひとつに過ぎず、同じ環境で育てられても統合失調症にならない人もいます。

その他の要因

統合失調症の人は、

・胎児の時期に十分な栄養が得られなかった
・胎児の時期に母親がウイルス性の病気に感染した
・出産時に低酸素状態が続いた

など、脳の成長に異常を生じているという説もありますが、あくまでも発病因子のひとつとして捉えられています。

統合失調症の対策・治療方法

統合失調症の治療では、

・症状の改善する
・再発や生活機能の低下を予防する
・日常生活の機能水準を一定に保つ

これらを目的として進められ、投薬および行動支援など多角的なアプローチで行なわれます。

抗精神病薬による治療

妄想や幻覚といった陽性症状を軽減・改善するためには、投薬治療が有効です。

第一世代と呼ばれる定型抗精神病薬が用いられていた時期もありましたが、アカシジア(身体がそわそわする・足踏みが止まらないなど、じっとしていることができない)や身体のふるえ、筋肉のこわばり、身体が動かしにくい、口がもつれるといった副作用が出やすいというデメリットがありました。

現在では第二世代と呼ばれる非定形抗精神病薬がはじめに選択されることが多く、アカシジア以外の身体症状は大幅に抑えられています。

分類 特徴 薬剤
定型抗精神病薬
第一世代
副作用が出やすく、陰性症状には効果がない ハロペリドール
クロルプロマジンなど
非定型抗精神病薬
第二世代
副作用が出にくく、陰性症状にも有効 アリピプラゾール
オランザピン
リスペリドン
クエチアピンなど

心理社会的治療

統合失調症の治療では、日常生活や社会生活の水準回復および向上を目指していきます。

生活技能訓練(Social Skills Training/SST)

発病によって低下した社会的な技能や生活に必要な技能の回復を目指す支援で、一般的にはグループを作ってロールプレイ形式で実施します。
基本的な対人関係に必要なコミュニケーション能力はもちろん、問題発生時のものの考え方などを適切な対応ができるよう訓練していきます。

作業療法
作業療法士のもと、料理・園芸・木工といった軽作業をこなしながら、日常・社会生活の機能回復を目指します。
作業を通して楽しむ気持ちや満足感、達成感などを実感できるよう、レクリエーション性の高いものから将来を見据えた専門性の高いものまで、幅広い作業内容が用意されています。

心理教育

統合失調症の症状や原因、治療方法などの知識を学び、自分自身の病気を正しく理解したうえで治療に取り組めるよう教育的な支援を実施します。
どのように治療を進めていくのかという方針決定に患者が携わることは、治療過程に大きく影響すると考えられています。

また、家族の感情表出が大きい(高EE/Expressed Emotion)と再発のリスクが高まると言われており、本人だけでなく家族に対するカウンセリングや心理教育も重要です。

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